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記憶力の低下が気になるアラフォー男の備忘録

【書評】見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

目次

見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

本書は、故スティーブジョブズと親交のあったキヤノン 酒巻久氏のキヤノン電子再建に関する実体験をもとに、 経営者ならびにビジネスリーダーに向けに、時代、企業、人間の 本質などを「見抜く」ための力を説くビジネス書。

本書内で、興味深いのは、キヤノン電子内の実話に基づく、 政治、嫉妬、変化への嫌悪など、日本企業の負の部分を 包み隠さず書いているとところである。、

例えば、キヤノン電子の再建の初期状態を下記のように書いている。

(本書より)

変化を嫌い、我が身を守ることにかけては驚くべき情熱を発揮し、再建のための努力を
あちこちで寸断して骨抜きにしようとする抵抗勢力が少なくない。

ダメな会社ほどこの手の人間が、役員や幹部社員などリーダー層に巣くっている。
古い会社は特にそうで、それこそ狡猾古狸があっちにもこっちにもいる。

私が、着任した当時のキヤノン電子がまさにそれに近い状態だった。

ダメな会社の特徴として、

  • ①トップ(リーダ層)がたるんでいる。
  • ②受動的に・指示待ちの人が多い。
  • ③売り上げの20%~30%の無駄がある。

としている。

②の日本企業の主体性のない仕事の仕方が出来上がる構造を 以下の書籍では、下記のようにたとえている。

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来 (光文社新書)

(「若者はなぜ3年で辞めるのか? 」より)

従業員が10人いたとして、

「よし、寄せ鍋を作ろう。詳細を決めてくれたまえ」(社長)
「醤油ベースにしよう。具は何がいいか、おすすめれレシビを作ってくれ」(役員)
「海産物がいいな。君、適当にスーパー回って買いだしてきて。」(部長)
「じゃあ、タラとカニでいこう。あとは料理しとけよ。」(課長)
「はい」(六名の社員たち)

とまあ、こんな具合に一連の流れが自然に出来上がり、末端に下りてくる頃には、
実に単純な作業に成り果てているわけだ。あとは、六名で並んで作業をするだけで、
残業でクタクタになるのもたいていの企業ではこのレベルの人たちだ。

日本企業に勤めている自分にとっても、まさに耳の痛いものではあるが、 あながち間違っていないところがつらいところ。

本書には、生々しい話が続く。

見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

見抜く力 リーダーは本質を見極めよ

(「本書」より)

業績不振の子会社では、親会社から来た社長の追い落としを狙って、しばしば
親会社のトップに密告の投書が行われる。

私は、1年ほどじっくり人物観察をしてから人事に手をつけるのだが、
案の定、匿名の投書が次々に御手洗社長のもとへ届くようになった。

そして、最も胸を打ったのは、

(「本書」より)

社内政治の裏側では、そうした足の引っ張り合いは珍しくない。
呆れた話だが、それが現実だ。

つまり、会社とはそうした呆れたことを大の大人がやるところであり、 そうした世界観を前提として世界で、再建・改善を図った氏が書いた本であることが 本書の価値といえる。

肝心の「見抜く力」についてでは、赤字解消を見抜き改善していく過程について おおむね以下のようなことがアプローチとして、書かれている。

  • ①まず、ムダをお金に換算して「見える化」し、
  • ②社員が能動的に働けるよう、(主に心理的な)インセンティブを適量加えながら、仕組化し、
  • ③慢心がうまれないように、常に変化を促しながら、
  • ④その過程で、ムダや膿を一気に吐き出す。

①は売り上げ対する各費用(事務用品、賃料、光熱費など)ごとに算出し数量的に把握できるようにし、

②は、「課長は部下の提案を拒否してはいけない」ということを課長権限に明記したりして、社員の能動性を引き出し、

③自前の開発資金をねん出し、若手が燃えるテーマに挑戦させ、変化に強い文化を熟成させながら、

④で、だらけたリーダー層の人事に一気に着手。

といった具合で、組織改革が実行された過程が克明に描かれている。 どれも、当たり前のことのように思えるが、これを一気に実行できた「実行力」こそが 再建の鍵だったのものといえる。(正に「言うは易し、行うは難し」である)

最後に、アラフォー世代的に鼓舞されるところとしては、

(「本書」より)

40台になったら、20代の2倍勉強する。

マネジメントの能力が必要になる40代以降であれば、会社から求められる100の能力を
維持するために、20代の頃の2倍勉強が必要になる。
50代なら、3倍勉強しないと、とてもではないが、100の能力を維持できない。

無駄な残業をだらだらとやったり、どうでもいい飲み会で会社の悪口を
言っている暇があったら、さっさと家に帰って、勉強することである。

40代、50代になっても会社から必要とされる人間であり続けるには、
それしかない。

それしかないようである。

類書もあるので、今度読んでみようと思う。