司馬遼太郎『新史 太閤記』(司馬戦国作品マイベスト!)
目次
はじめに
私は歴史小説をくまなく読んでる人ではないものの、時より無性に歴史小説を読みたくなる時期が定期的にやってきます。。 父親の影響で、以前は池波正太郎を読んでた時期はあったものの、学生時代は、司馬遼太郎一辺倒となり、以来数年おきに「司馬遼太郎が無性に読みたくなる!」を定期的に繰り返してまいりましたが、昨今のコロナの影響で、自宅で過ごすことが多くなってからは、もう一度司馬作品を読んでみようかと思っております。
司馬作品のおすすめ
まあ、私のようにあんま詳しい前提知識はないけどって人でも、読みやすいもので選べば以下のあたりでしょうか。
幕末~近現代の時代にかけた名作ですね。が、「燃えよ剣」以外は何といっても、超がつく大作。なものんで、久しぶりの司馬作品としてはできれば、2巻~4巻ぐらいで終わるやつって感じで日和った読書をしたいので、とりあえず、戦国三部作を選び、読んでみます。
司馬遼太郎戦国三部作
私のような俄かファンが言わなくても以下の通りですね。有名ですね。
国取り物語、関ヶ原のほうが有名だと思いますが、個人的には文句なしで「新史太閤記」がマイベスト!!です。 その理由はつらつらと書かせていただきます。(あくまで私見です)
①上下巻で終わる。
これ、私的に意外に大事です。
司馬作品はデフォルト文庫本で4巻程度、長くて10巻程度行きますが、これ、根気強く読むのに結構集中力いります。 根っからの読書マンであれば、そんなことと思うかもしれませんが、とりあえず、私のようなライト読書マンは この程度が丁度いいのです。1週間程度で読めるので集中力も切れない程度です。
②読みやすい。
司馬作品は、意外に読んでてつらい、いいかえると作品に入り込めないって場合があります。 それは、その内容の前提知識が私の中で乏しいような場合がほとんどなので、読み手である私の問題ったら問題なのですが、 とにかくそういう場合があります。具体的にいえば、「国取り物語」の前半あたりや、「飛ぶが如く」あたりでしょうか。
逆に前提知識も必要なく、最初からガンガン入り込める作品もあります。それは私的には、「燃えよ剣」、「竜馬がゆく」、そして、 この「新史 太閤記」が該当します。
これは感覚的なことになりますが、とにかく理由なく読みやすいのです。
③オールスターキャストである。
「新史 太閤記」は平たく言えば、豊臣秀吉の成り上がり物語ですが、その過程で、登場するキャストが何といっても、華があります。 織田信長、徳川家康、黒田官兵衛、前田利家、その他、どれも主役級を張れる人たちが、がんがん登場し、どれも良くも悪くも魅力ある形で描かれています。
④上司信長の存在感
豊臣秀吉の上司、織田信長がエグいです。 頭キレキレ、パワハラ上等!、大将たる存在感を存分に見せつけます!
平たく言えば、 「者ども!、俺の言うことしっかり聞けや!。くどくど俺に説法など説く輩はマジでぶちのめすぞ!」って感じでしょうか。
この空気を絶妙に読むのが秀吉で、さらに秀吉の明るさも手伝って、それほど信長が嫌な奴には感じず、むしろカッコよく感じるから不思議です。 一方、この空気をいまいち読めないのが「国取り物語」で描かれる明智光秀で、信長に幾度となく逆切れされます。
信長のえげつなさを、中和できた陽気な秀吉に対し、生々しくしてしまったまじめな光秀の違いでしょうか、 個人的には、「国取り物語」で描かれる織田信長より、「新史 太閤記」での織田信長のほうが好きです。
⑤秀吉の魅力
最後はなんといっても、主人公の「人たらし」たる秀吉の魅力ですね。
成り上がるために、政略、調略、武略の限りを尽くしますが、 なんといっても、男の嫉妬をかわすための人間力、根回しが絶妙です。
これは、時代を超えて、サラリーマン社会でも通用するはずです。
最後は、家康と和睦するところで終わります。天下統一後のことはさらっとも描かれません。
天下統一後、秀吉は晩節を汚したともいわれますが、その辺りは作品でも完全にスルーされてます。 最後まで、秀吉がいい奴で終わるように、おそらく意図的なものであったかと思います。
私的には、家康と和睦のラストシーンが最も好きで、別に泣くとこではないのですが、 「秀吉!なんていい奴!!」って感じで、泣きそうになります。
- 作者:遼太郎, 司馬
- 発売日: 1973/05/29
- メディア: 文庫
そんな、天下統一を果たした豊臣家ですが、それから数十年後、大阪城もろとも家康に葬られます。 司馬作品的には、「城塞」に描かれますが、豊臣側のダメっぷりに「あの世で秀吉が泣いてるぞ!」と叫びたくなります。
- 作者:司馬 遼太郎
- メディア: 文庫