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記憶力の低下が気になるアラフォー男の備忘録

【書評】参謀の甲子園 横浜高校 常勝の「虎ノ巻」

目次

参謀の甲子園 横浜高校 常勝の「虎ノ巻」

今日は、夏の甲子園4日目。 今回は、ファンにはたまらない注目の好カード揃いということもあり、朝から、野球観戦。

注目のカードといえば、「横浜 vs 秀岳館」。特に、横浜高校は、世代的には、 ある種ブランド校のため、選手に関係なく、横浜高校の試合はつい、見てしまうものである。

残念ながら、初戦敗退という結果になってしまったものの、やはり横浜高校には、甲子園でこそ勝つ姿がふさわしい。 1・2年生主体のチームのため、また来年、激戦区神奈川を勝ち抜き、甲子園に戻ってきてほしいものである。

横浜高校に関しては、アラフォー世代的にやはり「渡辺・小倉体制」時代である。

横浜高校の頭脳とも言われた、小倉清一郎元部長の本としては、数冊出版されているが、 とりわけ、歴代のチーム評や、選手育成術などが詳細に記載されている 「参謀の甲子園 横浜高校 常勝の「虎ノ巻」」がお気に入り。(文庫本で値段も安い)

歴代の世代で高チームを作ってきた同校であるが、 個人的には、(自分と年齢も近いこともあり)「94年」チームが好きである。

チーム的にも、矢野、斎藤、紀田、多村選手とのちに4人もプロ入りする

(本書より)

「個人の能力でいえば、松坂世代以上の歴代最強チーム」

というほどの、個人能力の高いチームであり、とりわけ斉藤宜之選手(のちに巨人)が 強い印象に残っている。

(本書より)

「入学した時点で「プロだな」と思った数少ない逸材である」

と本書でも書かれている逸材。

自分にとっては、斉藤選手の、「バットを寝かしたシュアな打撃」スタイルが 横浜高校の王道的な(勝手な)打者像である。

本書では、「94年」チームの甲子園初戦敗退という失敗などを経て、 試行錯誤しながら、「98年」チームいわゆる「松坂世代」の春夏連覇に結実していく過程が 描かれており、大変興味深い。

個人的には、「98年」チームの春夏連覇は、高校野球の東の盟主が「帝京高校」から「横浜高校」 に変わったきっかけではないかと思っている。

実際に、松坂世代より少し上の世代となる自分世代の東京、埼玉のボーイズ・シニアの 有望選手は、帝京高校の縦縞に憧れ門をたたき、あの松坂でさえ、当初は帝京高校入学希望だったらしい。

98年以降、成瀬、涌井、筒香他、数々の有望選手のスカウティングに成功した横浜高校でも、 近年は、スカウティングには苦労しているようで、本書でも、中学生の高校選びの重要要素として、 下記があげられ、大学付属高校との選手争奪戦の場合は、敬遠されることも増えたらしい。

(本書より)

①「名門の大学付属高校」
② 共学
③ 専用グラウンド
④ 監督が優しいこと

ただし、近年も有望選手が継続的に横浜高校に入学していることから、 「プロ志望」の有望選手にとっての人気志望校であることに変わりはないようである。

あらゆる局面を想定せよ

本書の読みどころとしては松坂、成瀬、涌井、筒香といった大物選手の 育成秘話が語られる「第4章 エースのつくり方」があるが、個人的には、 小倉氏の野球論が語られる「第5章 あらゆる局面を想定せよ」が面白い。

なんといっても、氏の指導者感は、

(本書より)

「こんなプレーは教わっていない!」

私の信念は、選手たちにこう言われないようにすることである。
だから横浜では、実戦で起こりうる、ありとあらゆることを想定して練習する。

備えあれば憂いなし。仮に100試合に1回しか起こらないようなプレーでも、
私は教えておきたい。

である。徹底的にディテールにこだわるところは、アップルの故スティーブ・ジョブズを 彷彿とさせるマネジメントである。

本書に記載される技術論においても、単純に、「打つ」・「投げる」といった側面だけでなく、

  • キャッチボール論
  • 配球論
  • ウェストの使い方
  • 投内外連係プレー
  • ピックオフプレー
  • 走者の心得(勝敗を分ける「片側リード」が興味深い)
  • 相手にダメージを与える「バスター」

など、氏の野球観の一端に触れることができる。

氏の教え子である平田体制になって、スタイルがより豪快になった印象を受けるが、 伝統的なち密さと豪快さをうまく融合したニュースタイルの横浜高校の活躍を今後も期待したい。